イイ夫婦の日

 
 
11月22日は“いい夫婦の日”だったらしいです。
ってことで、ちょっと日にち過ぎてますけど小ネタ。
 
 

嫁さん?

 
 
「くぅぅ〜………さぶっ」
 
すっかり寒くなってきたっちゃね…はよ帰ってこたつで寝よ……。
 
「チョト、ソコのオ兄サン」
「あ?」
「アナタ今買い物したデスヨ」
「ああ?」
 
呼び止める片言の日本語に振り向いたら、デカい女の子とちっこい女の子がニコニコしとるっちゃん。手招きしとーし、れいなの周りには人はおらんし…れいなのコト呼んどるとかいな…?
 
「ソウソウ。アナタデスヨ」
「なん?」
「イイカラ、チョトコッチ来い」
「………。」
 
なんかデカい方のタメ口が気になったっちゃけど、まぁカワイイ子やったけん、とりあえず言われた通りに近づいた。
 
「なんスか?」
「今商店街キャンペーンヤッテマス!」
「500円以上買い物シタ人、ガラガラ回す出来ル」
「ふーん…」
 
そう言えばさっきのクリーニング屋のおばちゃんがそんな事言いよった気がすると。店の奥におった女の子のふとももが気になってあんまり聞いとらんかったっちゃけど…。
 
「福引券出ス」
「……はい」
「オオゥッ!コレ6回出来マスヨ!」
「ところで、何が当ると?」
「イイ商品イパイ用意シテマスヨ!!」
 
そう言いながらちっこい女の子が背後にある看板を見上げたけん、れいなもつられて視線を上げた。
 
 
  ◆特賞(金色):41型液晶テレビ(プリンセス電器店提供) 1名様
 
 
「おほっ!れいな、テレビほしいっちゃん!」
「アー、ジャア、頑張テ当テテクダサイ!」
「おしっ!このガラガラを回せばよかとね?」
「ハイハイハイ〜ゆっくり回してクダサ〜イ」
 
慎重に慎重に…テレビ出ろテレビ出ろ…金色の玉出ろ金色の玉…
 
「金玉出タラ、テレビデスダ!」
「ブハッ!!!!!!!!きwwwwんwwwたまwwwwwww」
「リンリン、ソレハ言うダメネ」
「エッ?ナンデデスカ?ダッテ、テレビは金玉デスヨ」
「ソウダ。デモ違うダカラ……」
 
いやまぁ、そうっちゃけどwww二人とも言うとー内容は間違っとらんけどwww間違っとらんっちゃけどwwwww
 
「あ、出た……白い玉出たと」
「白玉デスカ!白玉出マシタヨ!!!」
「なん?!白も当たりと!?」
「白はティッシュダ」
「ハズレやん…紛らわしいリアクションやね…」
「アー、デモマダ5回イけマス!」
「イけるトカ言うのもダメダカラ、リンリン」
「いやwwwそれは別にいいんやなかと?」
「ナンデナンデ?ドウシテダメデスカ?!」
「上手に説明出来ナイ。デモダメ」
「やったら突っ込まんでもよかっちゃろーに……」
「ダッテダッテ!コノお客サン、あと5回イけマスヨ!優シク回シタラ金玉出マス、ダカラ!頑張テクダサイ!」
 
うわぁ…めっちゃ笑顔やし、この子www無邪気って罪やねーwwwデカい方の女の子、諦めとーしwww諦め顔でバナナ食っとーし!!!
 
「それじゃあ次、回すと」
「イッちゃってクダサイ!」
「イくと!!ってまた白玉やし!!!!なんこれ!!!!!!」
「クジ運悪いナ…モグモグ」
「くっ………次イくっちゃよ!!!!」
「カモーン!金玉!!」
「……リンリン……モグモグ…自重……」
「またかぁぁぁぁぁ!!!!」
「モット優シク!優シク回さないと金玉出ナイネ!!」
「くっそぉぉぉぉぉぉおおおっ!!また白いぃぃぃい!!!!」
「大丈夫ダ!次コソ金玉出シテクダサイ!!」
「いや、出さんし!!」
「ナンデ?!」
「あー、嘘!間違えた!!出す!!れいな出す!!もう、マジ本気で金玉出すけん!!!」
「オオゥッ!金玉出してクダサイッ!!!!」
「モグ……変な盛り上ガリダナ……」
「うおりゃぁああぁぁってまぁぁたぁぁぁっしぃぃろぉぉぉぉぉ!!!!!!」
「アイヤー……次、最後にナチャッタデスヨ……」
「ちょコレ、本当に白い玉以外の色入っとーと?」
「入ってマスヨ!」
 
ちっこい女の子はそう胸を張って言いよーけど…意外におっぱいちゃんやね……ってそうやなくて!なんかデカい方の女の子が何げに動揺しとるっぽいんやけど……。
 
「なぁ…ホントーに入っとーと?金玉とか」
「………ハイテル」
 
デカい方の片言具合がひどくなってるんですけど!しかもなにその変な間!動揺してんのかまだ一口残っとーバナナ落としたし!コイツ、怪しい!!
 
「ホントは金玉なんか入っとらんのやろ」
「入ってマスダ!ワタシ朝入れマシタ!デモ今日誰も金玉出してナイデス!」
「ソウダ。リンリンが朝入れてイタのジュンジュン見タ」
 
デカい方の女の子が必死にフォローしよーのがますます怪しいっちゃん…やっぱりコイツ…。
 
「それ、抜いたやろ?」
「………抜いてナイ!」
 
また変な間が空いたっちゃん!コイツ絶対金玉抜きよったやろ!
 
「アンタ、抜いたやろ。そんなにテレビ欲しかったと?」
「抜いてナイ!明日の休み、リンリンと一緒ニ大きいテレビでDVD見タイトカ思テナイ!」
「………抜いたな……絶対抜いたな……」
「………ぬ……抜いてナイ……」
「まぁ、ええっちゃん。れいなん家、一応テレビあるし…で、テレビ以外やと何が当ると?」
「ハイハイ!イイ商品マダマダイパイありマスヨー」
 
 
  ◆1等(黄色):国内旅行券10万円分(ラブリー旅行代理店提供) 2名様
  ◆2等(桃色):いい夫婦(ワイワイエージェンシー提供) 2名様
  ◆3等(黄緑):夫婦茶碗セット(雑貨屋お豆の部屋提供) 5名様
  ◆4等(青色):缶ビール1ケース(中澤酒店提供) 10名様
  ◆5等(紫色):高級数珠セット(光井仏具店) 10名様
  ◆参加賞(白色):ポケットティッシュ(朝日野商店街提供) 1122名様
 
 
所々突っ込みたい物もあるけど…なかなかの品揃えやね……。
 
「ってか、あのいい夫婦とか夫婦茶碗ってなん?」
「今日は11月22日でイイ夫婦の日デスダ!」
「あー…だからか…」
「ソウダ。商店街に来ルイイ夫婦に感謝スルキャンペーンダ」
「でもれいな、結婚しとらんちゃけど」
「ソユー人のタメニ2等を用意シタデスヨ!」
「“いい夫婦”??なん?夫婦をもらうと?」
「違いマスヨーw」
「上手に説明出来ナイ。デモトテモお徳」
「ふーん…ま、いっか。れいな、こん中やったら旅行券がよかと」
 
ズルッ!!
 
「アアッ!ジュンジュン!大丈夫カ?こんな所にバナナの皮捨てるカラ滑るデスヨ!」
「アー、ゴメン……」
 
コイツ……旅行券の玉も抜いたっちゃね……めっちゃ目が泳いどーもん…。
 
「黄色い玉も抜いたんか!」
「抜いてナイ!」
「めっちゃ動揺しとるやん!キョドっとーやん!!!」
「ドーヨートカ意味ワカンナイ!!」
「そうやってすぐ日本語わからんみたいなフリするやろ?!嘘やろ!!」
「嘘ジャナイ!!」
「なんでイくとか金玉とか知ってて動揺がわからんと?!!!」
「ワカンナイモン!!」
「っ、あーー!!!ムカつく!!!!もう!ガラガラ回せばいいんやろ!!どうせティッシュしか当たらんのやろーけどっっ!!!!」
「大丈夫デス!ちゃんと朝、ワタシが全部の色の玉入れマシタカラ!」
「わかったけん!それはさっき聞いたけん!!!」
「アー!モット優シク回すお願いシマスヨ!」
「優しくとか出来るかっ!!」
「アワワ!優シクシナイとイケマセンデス!」
「イくなら激しい方がええっちゃろーが!!!!」
「ダメデスダメデス!イケマセンデス!!ソレじゃ金玉出ナイデス!!」
「金玉は始めっからないやろーが!!!!」
「オマエ、金玉ナイノカ?モグモグ」
「あるわボケ!!!!!!ってかバナナ2本目食うなアホ!!!!!!」
「金玉アルデスカ?ナイデスカ?ドッチ?」
「うっさい!!ってか何色の玉も出でこんのやけど!!!!」
「オ客サン!グルグルシスギデス!優シク!優シク回さナイと出ナイデス!!」
「優しくとか出来るかぁぁああああああっ!!!!!!」
 
ガンッ!ガシャン!!
 
ゴロゴロゴロ……
 
「アァァ…壊れマシタ……」
「アーア…壊したナ…」
 
ネジが外れて転がってったガラガラの本体部分を見つめて悲しそうな顔をするちっこい女の子……ゴメン……でも、デカい方の女の子がれいなを咎める様な目をしてるのには納得いかんのやけど。
 
「アー……バッチリ壊れチャタ……」
「ゴメンて……」
「オマエ弁償」
「弁償がわかるのに動揺がわからんとか……」
「意味ワカンナイ!」
「元はと言えば、アンタが不正な事しよーからやけんね!」
「不正トカ意味ワカンナイ!!」
「漢字わかっとーやん!!」
「アアッ!!!」
「なん?」
 
何かに気付いたちっこい女の子がしゃがみこんでるのを見たら、地面に転がったバナナの皮をつまみ上げとった。
 
「玉が出テマシタ!」
「えっ?マジ?何色の玉が出とーと?!」
「ピンクデスヨ!ピンクは日本語デ桃色デスヨ!」
「桃色…って……“イイ夫婦”??」
「2等ダナ。オメデトウヨカッタナ」
「なんかアンタに言われると……素直に喜べんっちゃけど…」
「シカモ!ふたつ出テマシタ!」
「デモ今のハ最後の1回ダッタダロ」
「デモ1回でふたつ出チャッタ……」
「ジャア仕方ナイナ…コレ申込み用紙ダカラ2枚書ク」
 
そう言って3本目のバナナをくわえながら差し出されたのはよくわからん申込み用紙。名前と住所と性別だけの記入欄がある申込み用紙。………怪しすぎるっちゃろ。
 
「なんこれ……こんなワケわからんモンに名前とか住所とか書けんし!」
「大丈夫ダ。無料ダカラ」
「世の中タダより高いものはないけん、東京行ってもウマい話には気をつけんとあかんよ!っておばあちゃんが言うとったっちゃん!!!なんかコレ裏があるやろ!!!!」
「ナイデスナイデス!コレカラ一生お金トカイラナイデスヨ!」
「シカモ二人分トカちょーーーーラッキーダゾ、オマエ」
「オマエ言うな!オマエ言う前にちゃんと説明しぃよ!」
「ダカラオマエがイイ夫婦ナルンダにゃん。コレ以上上手に説明デキナイにゃん」
「にゃんてなんよ、にゃんて……」
「サービスダ。カワイイダロ?説明デキナイお詫びダ」
「そんなサービスいらんし……」
「ハイハイハイ。早くココに名前トカ書いてクダサーイ」
「………ホントに大丈夫と?」
「ダイジョーブ」
「バッチリデース!!」
 
不安が全くなくなったとは言えんけど、まぁ絶対にお金がかからん言われたけん、とりあえず素直に申込み用紙2枚に記入した。その後渡された、ブサカワな亀とウサギのイラストが描かれた「お客様控え」っていう紙切れ2枚を握り締めて抽選会場を離れた。歩いて帰りながらお客様控えを裏返してみるけど白紙で、お店の電話番号すら書いてない。怪しい……ってかこんなんが2等とか……詐欺やろ詐欺。ガラガラ詐欺やね。いやー、れいな、ウマい事言うっちゃねーwオレオレに掛けてガラガラwwwこれ、おもしろくない?!れいなヤバい!!!とか考えとー間に家に着いたと!コタツ入って、テレビ見てー…あ、今日の晩ご飯なに食べようかいな?
 
「おかえりなさ〜い♪ご飯にする?お風呂にする?それとも、わ・た・し?ウヘヘw」
「…………………。」
 
バタン
 
…………あまりの空腹に今れいな幻が見えたっちゃん…………いや、開けるドア間違えたっちゃね………でも、れいなが持っとー鍵で開いたって事はここはれいなん家やんね………え………じゃあ今の誰?あぁ、幻か………そうやね、うん。まぼろs
 
「あのー…お家入らないんですか?」
 
ドアの隙間からひょっこり顔を出している女の子。そのドアの横には間違いなくれいなん家の部屋番号……。
 
「あのー……泥棒さんですか?」
「やだなぁw違いますよぉ〜www」
「いやでも勝手に人ん家入っとーし……」
「あれ?絵里、貴方に呼ばれたから来たんですよ?」
「いや…呼んどらんし……」
「え?だって貴方のでしょ?そのお客様控え」
「え?あ、これ?」
「そうそうwそれです!」
 
れいなが持っていた控えを目線の高さに持ち上げると嬉しそうに目を細めて笑う女の子。えーっとさっき自分で“えり”って言いよったとね…えりちゃん…女の子らしい感じの子でかわいかね。バリ怪しいっちゃけど。
 
「まぁまぁ、こんな所で立ち話もなんなんでぇ〜、中に入っちゃってくださいよぅw」
「はぁ……」
 
自分の家に他人から招き入れられるなんとも言えないこの違和感の中、れいなが玄関に入るとぽわ〜んと美味しそうな香りがしてきた。
 
「えっと……このにおい……カレー?」
「ピーンポーン!だいせーかーい!今日の晩ご飯はカレーでーす!」
「え?なん?なんで?なんでアンタがれいなん家でカレー作っとーと??」
「えー、だってぇ…新妻の定番料理と言えばぁ〜カレーかなぁって……」
 
モジモジしとーし…フリフリエプロンの裾イジイジしながらモジモジしとーし……ちょっ……キャ…キャワ……きゃっわぁぁぁぁあああぁぁあぁぁっっっ!!!!!!!!!!
 
「はいは〜い、上着脱いじゃいましょうね〜」
 
いつの間にかれいなの背後に回ってれいなが着ていたダウンジャケットを脱がせようとするえりちゃん。いや、ありがたいっちゃけど……オカシイよね?やっぱり。
 
「ちょっ、ちょっとタンマ。だけんれいな、まだ状況がよくわからんのやけど……」
「へ?あぁ、自己紹介がまだでしたね!絵里は亀井絵里です!」
「あ……田中……れいなです……」
「不束者ですがぁ、これから末永くよろしくお願いしまぁ〜す!」
「あぁ、よろしくおねが……って、不束者?末永く?はぁっ???」
「えっ?あれ?不束者って言いますよね?あれ?違う?」
「いや、言うけど……言いますけども!」
「遅くなりましたぁ〜!!!」
 
能天気な声と共にまた玄関のドアが開いて誰かが入ってきたけど、今は別の事に構ってるヒマはなかっちゃん!
 
「ちょ、宅急便ならまた後にしてく………って、誰?」
 
目の前には宅急便の人には程遠い、全身ピンクな女の子。
 
「鏡見てたらついつい見惚れちゃって遅れちゃいましたぁ〜♪テヘッ」
「あー。さゆ、おーそーいぃー。絵里がカレー全部作っちゃったよぉ〜」
「ゴメンゴメンw」
 
なにこの会話……れいな完全にはぶられとーよ……ここ、れいなん家やのに……。
 
「いや、だから、誰?」
「ワイワイエージェンシーから来ました!道重さゆみでーす♪」
「ワイワイ……エージェンシー……って……コレ?!」
 
確か、ガラガラの景品の横にそんな名前が書いとった気がしたと!れいなは持ってたお客様控えを確認した。
 
「そうそう、それなの!」
「亀のやつが絵里ので、ウサギのがさゆの分ですよw」
「え…っと……どーゆー意味…かな??」
「だから、ワイワイエージェンシーはイイお嫁さんとかイイ旦那さんをご提供する会社なの」
「れーなは今日ガラガラで“いい夫婦”を当てたでしょ?」
「だから、さゆみと絵里がいいお嫁さんとして派遣されたの」
「イイ…嫁……ですか…」
「そうなの♪だから、不束者ですが、末永くよろしくなの♪」
「あ!カレーが焦げちゃう!れーな!早く着替えて!」
「手もちゃんと洗うの」
「さゆー、冷蔵庫からサラダ出してねー」
「はーい♪」
 
いや…あの…えっと…れいな…嫁さんできたと?しかも2人も?……あれ?日本て重婚とかできたっけ?…いや、その前に……なに、コレ??
 
「れーなぁー!もうご飯できちゃいますよ?」
「早く上がってくるの!」
 
 
れいな、お嫁さんができたみたいです…………。
(しかも、2人も)
 
 
 

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この前うpした短編とオチが一緒みたいです………orz