ちょっとした思いつきで書いてみた

 
田中っちが無事、20歳になったっつーことで書いてみた小ネタ。
 
 
 

愛合傘

 
 
雨が降る夜

しとしとしとしと、雨が降る夜
だーれもいない、薄暗い道
れーなと色違いの傘をさして、並んで歩く
 
「あーめあーめふーれふーれかーさんがー」
「絵里うるさい。ご近所迷惑」
 
隣の傘の下で、ちょっと不機嫌そうなれーな
 
「いーじゃん。絵里、今、気分がいいのー」
「酔っとーと?」
「酔ってませんー」
 
ハタチになったれーなとちょっとお酒を飲んだ帰り
なのに、ノリの悪いれーな
さっきまで楽しく笑いあってたのに
なんだかおもしろくない
れーなが絵里を見たままなのを知ってて
思いっきりプイッとれーなとは反対側を向いてやった
そしたら、勢い余って歩道の少しの段差に足を取られた
 
「完全に酔っとうとね…」
「むぅ……酔ってないもん」
 
少しだけフラついた絵里をバカにしたれーな
れーなは可愛い可愛い恋人の絵里ちゃんをバカにした
 
ぜんぜんおもしろくなくて、足元にあった小石を思いっきり蹴飛ばした
小石は勢い良く飛んで行って、電柱にぶつかって止まった
そしたられーなも立ち止まった
 
「なに?どーしたの?」
 
無言で傘をたたんでるれーな
まだ雨は降ってるのに
 
「危ないけん……」
 
そう言って、れーなは絵里の傘の下に割り込んできた
そして、絵里の腰に手をまわされた
その、慣れた手つきがなんだかいやらしい……
 
けど、好き
 
だけど、なんだか照れくさい
 
「こっちっ側の肩が濡れちゃうじゃん……」
 
普段、れーなからそんなことしてくれることなんてないのに…
れーなとは反対側の肩にポタポタ落ちてくる雫を横目に、
絵里は思わず照れ隠しに悪態をついてしまう
 
「やったらもっとこっちに寄ればよか」
 
そう言ったれーなにもっとギュッと抱き寄せられた
れいなも酔ってるのかな?
だったら絵里、れいなに毎晩お酒を飲ませちゃうかも…
 
「れいな、別に酔っとらんけんね……」
 
ぶっきらぼうに吐き捨ててプィとあっちを向いちゃったれーな
でもちょうど街灯の明かりが当たって、赤くなってる頬が見えた
 
「どっちでもいいよ」
 
酔ってるか酔ってないかなんてどーでもいいや
絵里はれーなにギュッてしてもらえたら嬉しいんだもん
 
「れーなぁ……ちゅーしよ?」
「ココ、外」
「傘で隠せばいいじゃん」
「絵里、お酒くさい」
「れーなもそうじゃん!おあいこだよ!」
 
絵里は今、ココでしたいの
好きって思えた瞬間にれーなとちゅーがしたいんだもん
 
「今やなくてもええっちゃろーが…」
「今がいいの!」
「ダメやって……」
 
って拒否ってるわりに、またギュッと抱き寄せられて、
れーなと絵里の距離が近くなる
 
「今、したら…れいな、止まらんくなりそうやけん……」
 
うわぁ………
 
「じゃぁ絵里も、我慢する…」
「そうしてくれると、ありがたいと…」
 
明日も、雨降ってくれたらいいのにな……